大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和63年(わ)694号 判決

主文

被告人Aを死刑に、被告人Bを無期懲役に、被告人Cを懲役一七年に、被告人Dを懲役一三年に、被告人E及び被告人Fをそれぞれ懲役五年以上一〇年以下に処する。

被告人C、被告人D、被告人E、被告人Fに対し、未決勾留日数中各四〇〇日を、それぞれその刑に算入する。

被告人Dから、押収してある木刀片二本(昭和六三年押第一六三号の一及び三)、中古木刀一本(同号の五)、木刀一本(同号の三五)並びに特殊警棒一本(同号の三六)を、被告人A及び被告人Fから、押収してある中古青色ビニール製洗濯用ロープ(同号の八)を、被告人C及び被告人Aから、押収してある中古青色ビニールひも一本(同号の九)をそれぞれ没収する。

押収してある自動車運転免許証一通(同号の六)を被害者○○の相続人に、透明プラスチック製の入れ物一個(同号の一二)、ファッションリング一個(同号の一三)、ブローチ一個(同号の一四)、ペンダント付きネックレス一個(同号の一五)、ボタン一個(同号の一六)、ワイドミラー一個(同号の一七)、中古タオル掛け一個(同号の二四)、櫛一本(同号の二五)並びに白色縫いぐるみ二個(同号の二六及び二七)を△△の相続人に、それぞれ還付する。

理由

(被告人らの身上、経歴及び犯行に至る経緯等)

一  被告人Cは、昭和四三年一月二七日鹿児島県薩摩郡東郷町において、父○○、母△△の長男として出生したが、翌年両親が離婚したため、そのころ愛知県一宮市在住の父方の祖母に預けられ同女の養育の下、同四九年四月に同市内の小学校に入学したが、小学校三年生のころから怠学が始まった上に、店舗から玩具を窃取する事件を起こし、祖母が高齢で同被告人の養育が困難となったこともあり、同五二年一一月二二日から同県半田市内の情緒障害児短期治療施設「ならわ学園」に収容され、同施設の小学校に転校し、同校卒業後の同五五年三月二四日から同県一宮市内の養護施設「仲好寮」に収容され、次いで同年四月同市内の中学校に入学し、同五八年三月同校を卒業し、同月一五日、同県蒲郡市内の製鋼会社に採用され、勤務していたところ、同五九年八月に母△△が姉を伴って同被告人を訪ね、以来数回△△と面会した結果、同被告人は同年一二月三〇日同社を退職して名古屋市北区において右△△及び姉と同居を始め、間もなく△△が再婚したため義父とも同居を始めた上、義父の勤務する同区所在の電気会社に就職した。しかし、△△が毎晩のように飲酒しては同被告人の実父のことで当り散らし、また、義父とも折り合いが悪かったため、同六〇年七月に母の家を出て神奈川県川崎市武蔵小杉所在の新聞店に住み込み、新聞配達及び集金に従事した。同被告人は同六一年四月前記新聞店を退職し名古屋市に戻り、自動車運転免許を取得し、同年九月ころ布団販売会社に就職して出張販売に携わっていたころ、同販売がいわゆる催眠商法であったことから嫌気がさし、同年一〇月二六日出張先の栃木県足利市で仕事から逃げ出したが、たちまち所持金に困り、通行中の女性から現金二〇〇〇円在中のハンドバッグを窃取して検挙され、同年一二月一日名古屋家庭裁判所で試験観察に付されて名古屋市守山区所在の財団法人「立正園」に収容され、同所から同区内の土木会社に出社して道路舗装工事に従事し、さらに右立正園園長の紹介により同区所在の運輸会社に就職して同六二年五月七日同社社員寮に入寮し、同月一九日右裁判所より保護観察処分に付された。ところが同被告人は、その約一〇日後に配達先においてたまたま出会った義父とけんかとなり、これを理由に右運輸会社を解雇されて同社員寮を飛び出し付近をはいかいしていたところ、この間に義父が前記社員寮に残された同被告人の荷物を無断で入質してしまい、母及び義父の態度に失望した同被告人は夜間名古屋市中区のセントラルパーク付近において不良集団と交際し、シンナーを吸引するなどして交際していた。そして、このころ、分離前の共同被告人Dと知り合い、さらに同年七月ころ知人の紹介で暴力団山口組系弘道会内薗田組に加入し、同組構成員となって、同市中川区所在の同組構成員の集合する居宅に居住するようになり、既に同組構成員となっていた分離前の共同被告人Aと知り合った。また、同Fが同組組員の出入するスナックのホステスをしていたことから同女とも知り合って、同年一〇月ころまでの間同女と交際し、さらに同年八月ころ、同Bが同組構成員となったことから同被告人とも知り合った。同六三年一月五日ころから被告人Cは、前記弘道会会長の身辺を護衛する一員となり、同市中村区内のコーポうちふじに居住するようになった。

二  被告人Aは、昭和四三年八月二〇日長野県東筑摩郡山県村において、父○○、母××の二男として出生し、同五〇年四月に名古屋市中川区内の小学校に入学、次いで同五六年四月に同区内の中学校に入学したが、中学校在学中の同五八年四月二七日同区内において原動機付自転車一台を窃取して同年九月一三日名古屋家庭裁判所において審判不開始となり、さらに同年一二月一三日及び同月一四日にも同区内で原動機付自転車三台を窃取して、右中学校卒業後の同五九年三月二六日、同裁判所において不処分となった。同年四月、同被告人は同市北区所在の職業訓練校に入校したが、約二箇月後、同校において発生した不審火について同級生に嫌疑が掛けられたことで同校教師と話し合ううち、その態度が気に入らないと憤慨して暴行を振るったために退校し、その後同市中川区内のうどん店に約一箇月稼働し、同年九月ころ隣人の紹介で三重県上野市所在の個人経営の内装業者へ就職したが、夜遊びが過ぎて体調を崩し、雇主が同被告人の健康管理に自信を失った上に、同被告人自身右業者の給料が安いことなどから仕事に嫌気がさしたため、同六一年九月に退職し、その後名古屋市港区の居酒屋の手伝いをしていた。同年一一月ころ同被告人とその弟とその友人が交通事故を起こし、その際右友人が前記薗田組の某構成員の名前を出したことから、弟が同組事務所に連行されたため、同被告人は弟を連れ戻そうと同所に赴いたところ、同組組員から度胸を買われ、また、弟釈放の条件として同組加入を求められたことからこれに応じ、同被告人は同組構成員となった。同年一二月二三日深夜、同被告人は愛知県津島市において、食料品店に侵入し、窃盗未遂事件を起こして検挙され、同六二年一月一三日前記家庭裁判所において保護観察処分に付されたが、右保護観察期間中の同年二月一二日に同市内で現金等を窃取し、同年三月二〇日右裁判所により試験観察に付され、同県刈谷市内の運輸会社に補導委託され、同会社の寮に住み込んで勤務し、裁判所による処分が決定した後も同社に継続して勤務することが決まり、同年七月二〇日右裁判所により別件保護中の理由により不処分となったが、翌二一日には同会社寮を無断で退出して同会社も退職扱いとなった。同被告人は暴力団に戻れば気楽に生活できると考え、名古屋市中川区内の薗田組組員の集合する居宅に赴き同所に居住するようになり、このとき分離前の共同被告人C及び同Bと知り合い、また、当時被告人Cと交際していた同Fと知り合った。

三  被告人Bは、昭和四六年二月五日、名古屋市熱田区において、父○○、母××の長男として出生し、同五二年四月同市中川区内の小学校に入学したが、当時父親の仕事が不振で、一家が経済的に困窮したため、学校に給食費を支払うことができなかった等の理由で、級友のいじめに合っていたが、家庭内においては父親から「売られたけんかは買え。けんかをするなら負けるな。」などと言われ、多少の問題行動については放任する傾向の中で成育し、小学校三年時には級友に対し暴力を振るい、同五六年四月同市中川区内の別の小学校に転校したが、前同様級友に暴力を振るう傾向が見られた。同五八年四月、同被告人は同区内の中学校に入学したが、同五九年六月ころ病欠のため授業についていけなくなった上に、女子生徒に交際を申し入れたが断られて精神的に落ち込んだことが加わって、勉学に対する意欲を失い、不良生徒と交遊してシンナーを吸引するようになり、同年八月一六日に同級生と原動機付自転車を窃取して警察署で注意を受け、同年一〇月三日同区内において貨物自動車の荷台からシンナー入り一斗缶を窃取し、同年一一月一〇日愛知県海部郡弥富町において空き巣未遂事件を起こして児童相談所に通告され、さらには同六〇年二月二日及び同月八日にも菓子等を窃取し、児童福祉司による指導の措置を受けたが、同六一年初旬から同級の女子生徒と交際を開始したことから、生活態度が落ち着き、同年三月一四日前記中学校を卒業し、翌一五日右措置も解除となった。同年四月、同被告人は名古屋市中川区内の鉄工所に就職したが、他の従業員との交流が乏しい等の理由で同年八月に退職し、約一箇月後同市港区内の建設会社に土工として就職した。このころ同被告人は同年初旬以来交際中の前記女性との結婚を真剣に考えるようになっていたが、同年一〇月に同女が高等学校を中退したことから同女に暴行を振るって同女との仲にき裂が生じ、遂には同六二年七月ころ同女との交際を解消し、生活意欲を失い、再びシンナーを吸引するなどしていたところ、同年八月ころ中学校時代の友人から「やくざになれば女はすぐできるし、金も手に入る。」との誘いを受けて前記薗田組構成員となり、同市中川区の同組組員の集合する居宅に寝泊りするようになったところ、分離前の共同被告人C、同A及び同Fと知り合った。

四  被告人Fは、昭和四六年一月二〇日名古屋市千種区において、父○○、母△△の長女として出生し、同五二年四月同市守山区内の小学校に入学したが、同五六年一月二二日に両親が協議離婚し、同被告人は自ら家事を手伝うなどし、同五八年四月に同区内の中学校に入学したが、同五九年五月ころ、父親と交際し妊娠中であった当時一七歳の女性が同居を開始し、その後の同年九月七日父親は同女と婚姻したが、この間同被告人はわずか四、五歳年上の同女になじめず、積極的に会話をしなかったことから、同女から同被告人が同女を嫌っているものと受け取られ、やがて同女と折り合いが悪くなり、父親が妊娠中の同女を気遣ったため、同年七月ころ同被告人は愛知県西春日井郡師勝町の父方の叔父宅に預けられたが、叔父の妻と折り合わず、同年八月ころ名古屋市中川区の父方の伯母宅へ預けられ、これに伴い同年九月同区内の中学校に転校したものの、前同様伯母と折り合わなかったため、同年一二月同市昭和区の養護施設に入所措置がとられるとともに、同市内の中学校に転校し、同六一年三月同校を卒業した。同年四月、同被告人は同市南区所在の美容室に就職したが、親しかった同僚が退職したことから、同年九月に同室を退職し、このころ、前記セントラルパークに赴いて不良仲間と交遊を開始するとともに、シンナーを吸引するようになり、その後知人宅を転々として、同年一一月ころ同市中村区の美容室に就職したが、ここも約一箇月で退職し、同六二年七月ころから約一箇月間同市中区のスナックにホステスとして勤務し、この間客として来店した前記被告人Cと知り合い、同被告人と交際するようになったが、同被告人について薗田組事務所に出入しているうちに、同A及び同Bとも知り合った。被告人Fは同年一〇月ころ、薗田組幹部の紹介で同市中川区内のスナックに就職したが、勤務状態が悪かったため約二週間後に解雇された。

五  被告人A及び同Fは、同六二年八月ころから夜間前記セントラルパーク付近を自動車で暴走するようになり、この間に同所に遊びに来ていた分離前の共同被告人Dと知り合い、また、同B外不良仲間らと共同して、二、三回にわたり、「バッカン」と称して夜間自動車内で逢瀬を楽しむ男女に暴行脅迫を加えて金品を強取した。被告人Aは同年一〇月ころから同Fと交際するようになり、同女と共同生活をすることを希望していたが、右薗田組にとどまるかぎり二人の生活を支えるだけの収入が得られないと考え、同年一一月中旬、同組を無断で抜け出し、被告人Fを伴って名古屋市中川区所在の被告人Aの実家に戻り、同年一二月一四日から同市熱田区の建築会社にとび職として稼働し、同六三年一月二〇日ころ同市港区内の団地に、被告人Fとともに転居した。このころ、被告人Bは、薗田組の先輩から被告人Aを捜し出して組事務所に連れ戻すように命じられていたが、薗田組組員に隠れて同被告人と会っていたところを、同組組員に目撃され、被告人Bは被告人Aを組に連れ戻すことをちゅうちょしたため、被告人A同様組を無断で抜け出し、同被告人の紹介で右建築会社にとび職として稼働することになり、同月二五日ころから同市港区所在の政和荘に居住し、同年二月ころから被告人A及び同Fも同所に居住するようになった。

六  被告人Dは、昭和四四年四月二六日名古屋市瑞穂区において、父○○、母△△の長男として出生したが、同五〇年一一月四日両親が協議離婚し、以後母親に養育され、同五一年四月同市天白区内の小学校に入学し、次いで同五六年同市名東区の小学校に転校し、同五七年四月同区内の中学校に入学したが、この間被告人は、父親不在の家庭の中で、長男として家庭の中心にならねばとの意識を持ち続けて、家庭内では自分の気持ちを押さえつつ、母親からの期待に沿った行動をとっていた結果、母親は同被告人のこの態度に安心し、自己が家計を支えねばならなかったために、同被告人を監督する余裕がなかったこともあって、放任する傾向にあったところ、同被告人は中学校内では不良生徒と交遊し、同年六月ころ、早朝にバッティングセンターにおいて金品を物色中検挙されて警察署で注意を受け、同五八年九月七日には同区内で小学生から現金入りの財布を喝取して同五九年一月一九日名古屋家庭裁判所において不処分となるといった問題行動を起こしたが、同六〇年三月前記中学校を卒業した。同被告人は同月下旬から、同市東区の理容店において稼働したが、同六一年ころ同店店主から、理容仕事に向いていないとの指摘を受けて同店を退職し、その後愛知県小牧市内のすし店、同県三好町内の炉端焼店、名古屋市港区内のすし店と勤務先を転々とし、同六二年四月ころから同区内の自動車学校に通い始めたところ、同校で顔見知りとなったYに誘われて同年夏ころ、夜間右セントラルパークに出向き不良仲間とシンナーを吸引したり、自動車を暴走させたりして交遊するようになり、その間に分離前の共同被告人C外四名と順次顔見知りとなった。同六三年一月二五日ころ、被告人Dは右Yに暴力団山口組系弘道会内高山組幹部組員を紹介され、暴力団組員となれば住居と食事が確保できると考えたことから、同人の若衆としてその雑役に従事するようになり、同年二月一八日ころ、同人に命じられて同市港区所在の南汐止荘に入居した。

七  被告人Eは、昭和四五年七月一二日名古屋市中区において、父○○、母××の長女として出生したが、同四九年二月ころ母親が就職したため、専ら祖父母に養育され、同五二年四月に愛知県海部郡甚目寺町内の小学校に入学し、同五八年四月同町内の中学校に入学したが、この間授業を妨害したり、他の生徒に暴力を振るう等の問題行動を起こしたものの、同六一年三月前記中学校を卒業した。同年四月、同被告人は名古屋市中区所在の調理師専門学校に入校したが、家庭内の生活に物足りなさを感じていたことから、次第に外泊するようになり、同六三年六月から同市中村区内の飲食店でアルバイトを開始したが長続きせず、同年八月に右専門学校を卒業してからも就職せず、昼ごろ起床して夜間には無為徒食中の友人と交遊するといった生活を送り、同年一〇月八日に母親と口論の末家出をし、同日夜から前記セントラルパーク付近に出向いて不良仲間と交遊して本格的にシンナーを吸引するようになり、またこのころ前記被告人Dと知り合い、さらに同月一七日から暴力団山口組系国領屋下垂一家花井興業組員と名古屋市中区において同棲生活を開始し、同人との結婚を本気で考えるようになって、同年一一月下旬ころには同人を両親に紹介した。

八  被告人Eは同六三年二月二〇日に右組員を名古屋駅まで送り、同日午後一〇時三〇分ころ、前記セントラルパークに出向いたところ、被告人D及び前記Yと出会い、交遊していたところ、被告人A及び同Fが通りかかったことから、被告人Dが同A及び同Fを同Eに紹介した。同Eは同日夜、被告人Dの居宅である前記南汐止荘に宿泊し、翌二一日夜も同被告人及びYとともにセントラルパーク付近で交遊し、次いで同月二二日午後一一時ころ、被告人D及び同Eは、同Dが前記高山組幹部組員から借り受けた普通乗用自動車(以下D車という。)でセントラルパークに赴いた。

被告人Cは、同日午後八時ころから前記暴力団弘道会の幹部らとともに、同市中川区内のスナックでウイスキーの水割りを飲み、午後一〇時ころ同店を出て、同市昭和区に居住する知り合いの女性に会いに行こうと思い立ち、タクシーに乗車したが、途中、前記セントラルパークにおいて顔見知りの者と交遊しようと考え、同所で下車し、知り合いを見つけて立ち話をしていた。

被告人A、同B及び同Fは、同日夜被告人Aあるいは同Bの実家においてそれぞれ入浴した後、午後一一時ころ被告人A及び同FがA車両に乗車して被告人Aの実家を出発し、被告人Bの実家に立ち寄り同被告人を同車に乗車させたところ、被告人Fの提案で前記セントラルパークに遊びに行くことになり、同所に赴いてA車両を走らせたりしているうち、午後一一時三〇分ころ被告人Cと出会った。そこで被告人Aが同Cと話をしていたところD車両に乗車した被告人D及び同Eが通りかかり、被告人Aが同Eに対し、同C及び同Bを紹介した。そして被告人六名は、同所で自動車を走行させるなどとして交遊し、この間被告人B及び同Eはシンナーを吸引していた。

九  同月二三日午前零時ころ、同市中区錦三丁目六番一五号テレビ塔西交差点において、被告人Aが「バッカンでも、金城埠頭へ行ってやろうか。」と口にし、自動車内で逢瀬を楽しんでいる男女から金品を強取することを提案したところ、被告人C、同D、同B及び同Fがこれに賛成した。被告人Dは右高山組の所用でいったん同所を離れ、同日午前一時三〇分ころ同所に戻った後、被告人Eに対し「今から小遣い稼ぎに行くもんで、ついて来い。昔Bが殴られたことがある。殴った相手が大体見当がついている。そいつを殴りつけて小遣い銭を取る。」と申し向けたところ、同被告人は同行を承諾した。被告人C、同A、同D及び同Bは、A車両に木刀及び鉄パイプが一本ずつ、D車両に木刀が四本積載されていることを確認した後、二台の自動車に分乗して同所を出発して同市港区の金城埠頭へ向かったが、途中同市中区門前町二番六五号所在の「サンチェーン西大須支店」で被告人Cが自動車のナンバーを隠すためのガムテープを購入し、同市港区空見町二五番地空見緑地付近の路上で、被告人A及び同FがA車両の、被告人D及び同BがD車両のナンバープレートにそれぞれガムテープを貼付してナンバーを判読不能にし、同日午前二時三〇分ころ、右金城埠頭に到着した。

(罪となるべき事実)

第一  被告人C、同A、同D、同B、同E及び同Fは共謀の上、アベックを襲って金品を強取しようと企て、同日午前二時三〇分ころ、名古屋港区金城埠頭三丁目一番所在の名古屋港八二番岸壁上において、○○(当時二〇歳)及び△△(当時一七歳)が乗車する普通乗用自動車ニッサン・パルサー(以下○○車両という。)が停止しているのを認め、被告人Aが、A車両に同乗していた同C及び同Fに対し、「あの車をやるぞ。」と申し向けるとともに、後続のD車両に向かって手で合図をし、被告人Bにおいて所携の木刀で○○車両の運転席窓ガラスをたたきながら「出て来い。」と怒号したところ、○○車両が危険を感じて直ちに逃走を開始したため、被告人Cにおいて所携の木刀を同車両に投げつけて同車両後部窓ガラスを損壊し、次いで被告人六名においてA車両及びD車両に分乗し、逃走する○○車両を同区川西通五丁目二番地所在愛知県港警察署小碓派出所付近まで追跡して○○及び△△に暴行脅迫を加えたが、右両名が右派出所に逃げ込んで救助を求めたため、金品強取の目的を遂げず、

第二  被告人六名は、右犯行によって金品強取の目的を遂げることができなかったことから、同区泰明町二丁目一三番地付近路上に集合し、共謀の上、再度同様手口でアベックから金品を強取しようと企て、同日午前三時三〇分ころ、前記名古屋港八一番岸壁上において、同所に○○(当時二五歳)及び△△(当時一九歳)が乗車する普通乗用自動車トヨタ・カムリ(以下○○車両という。)が停止しているのを認め、同車両の直近後方にA車両及びD車両を停車させ、被告人Bにおいて、所携の木刀で○○車両の運転席窓ガラスをたたきつつ、「ばか野郎、降りてこい。」と怒号し、○○の肩及び腕に自己の両手を掛けて同人を車外に引きずり出した上、手拳で同人の顔面を二、三回殴打し、次いで右膝で同人の腹部を約二回足蹴にし、さらに木刀で同人の頭部及び背部を殴打し、被告人Cにおいて、○○車両右側を所携の木刀でたたいた後、○○の大腿部及び腰部を五、六回足蹴にし、被告人Dにおいて、所携の特殊警棒(昭和六三年押第一六三号の三六)で○○の腰部及び腹部を約一〇回殴打し、同人が膝立ち状態になったところ、被告人Aにおいて○○の胸部を足蹴にし、次いで同人に対し「金を出せ」と申し向け、そのころ被告人Dにおいて○○車両運転席ドア及びボンネット付近を、被告人Bにおいて同車両右サイドミラー、後部窓ガラス及びボンネット付近をそれぞれたたくなどの暴行脅迫を加えて、○○の反抗を抑圧し、被告人Aにおいて、○○からその所有する現金八万六〇〇〇円を強取するとともに、被告人Eにおいて、△△に対し「てめえも降りろ。」と怒号し、被告人Fにおいて所携の木刀で○○車両の助手席窓ガラスを損壊し、次いで被告人E及び同Fにおいて、△△の頭髪をつかんで同女を車外に引きずり出し、被告人Eにおいて△△に対し「人よりいいものを着ているな。よこせ。」と同女の着用するトレーナーを要求し、被告人Fと共に、こもごも所携の木刀で△△の頭部及び背部を殴打し、被告人Fにおいて△△に対し「時計もよこせ。」と申し向けて、右各暴行脅迫により同女の反抗を抑圧して同女からその所有する腕時計一個(時価七〇〇〇円相当)を強取し、さらに被告人Eにおいて、△△の足が同被告人の足に接触したことに因縁をつけ、被告人Fと共に、こもごも△△の足付近を足蹴にし、これを見た○○が△△の方へ走り寄って同女をかばおうとその上に覆いかぶさったところ、被告人Dにおいて「俺の女に手を出すな。」と因縁をつけて○○の背部を足蹴にし、被告人Bにおいて「人の女に手を出しやがって。」と怒号しつつ○○の顔面を手拳で殴打し、被告人Aにおいて右○○車両前部をたたき、被告人E及び同Fにおいて△△の頭部、首筋及び背部を木刀で殴打しつつ、被告人Eにおいて△△に対し「早く脱げ。」と再度前記トレーナーを要求してその犯行を抑圧した上同女から同トレーナー上着一着(時価一万円相当)を強取し、その際、前記各暴行により○○に対し約一週間の安静加療を要する頭部、腰部挫傷及び擦過創の、△△に対し約一週間の安静加療を要する頭部、頸部、左上腕及び腰部挫傷並びに両膝小切創の各傷害を負わせ、

第三  被告人ら六名は右犯行後前記テレビ塔付近に戻ってきたものの、前記各犯行にも飽きたらず、共謀の上さらに大高緑地公園において同様手口で金品を強取しようと企て、A車両とB車両に分乗し、同日午前四時三〇分ころ、同市緑区鳴海町字鴻ノ巣五三番地所在県営大高緑地公園第一駐車場に到着し、同所において、○○(当時一九歳)及び△△(当時二〇歳)が乗車する普通乗用自動車トヨタチェイサー(以下○○車両という。)が停止しているのを認め、同車両の右後方にD車両、左後方にA車両を停車させ、○○車両の退路をふさいだ上、被告人Bにおいて、所携の木刀(同号の三五)で○○車両運転席窓ガラスをたたきつつ、運転席にいた○○に対し「降りてこい。」と怒号し、下車した○○の頭頂付近を右木刀で一回、腕及び腹部を五、六回殴打し、これに続いて被告人A、同D及び同Fが下車したころ、A車両内で仮眠していた同Cも目を覚まし、被告人Cにおいて右○○車両の運転席付近及び右前照灯をたたいた上、○○を木刀(同号一)で殴打し、さらに同人の左足を足蹴にし、被告人Aにおいて所携の鉄パイプ(同号の一一)で○○の足を、被告人Dにおいて所携の木刀で○○の腕及び脇腹付近をそれぞれ殴打したのに続き、被告人Dにおいて○○車両運転席窓ガラスを、被告人Bにおいて同車前窓ガラスをそれぞれ損壊し、被告人Aにおいて、右暴行により反抗を抑圧されている○○に対し「金を出せ。」と申し向けて同人所有の現金一万円を強取した後、同車両屋根に登り車体をたたいたが、他方被告人Fにおいて所携の木刀で同車両助手席窓ガラスをたたいて、助手席にいた△△に「降りろ。」と怒号し、被告人Eにおいて所携のシンナー入りビニール袋で△△の頭部を殴打しつつ「降りろ。」と怒号し、同女の頭髪をつかみ、被告人Fと共同して△△を車外に引きずり出した上、被告人Eにおいて所携の木刀(同号の五)で、同時に被告人Fにおいても所携の木刀で、同女を多数回殴打しつつ、足蹴にしてその反抗を抑圧した後、同女を強いて上半身裸にさせたところ、被告人D及び同Bにおいて、同女が右暴行により抗拒不能の状態にあるのに乗じ、同女を順次姦淫しようと企て、共謀の上、前記第一駐車場の北方約五〇メートル地点所在の丘陵地に同女を連行し、同所において、被告人D、同Bの順に同女を強いて姦淫し、その際同所に赴いた被告人Cに対し同女を姦淫するよう誘いかけ、被告人Cも被告人D及び同Bの右行為を了承して同被告人らと共謀の上強いて同女を姦淫しようと決意し、同Bに続き同女を姦淫したが、その間被告人Aにおいて、○○車両から△△所有の現金一万一〇〇〇円、ワイドミラー一個(時価一〇〇〇円相当、同号の一七)を、被告人Fにおいて同車両内から△△所有の櫛一個(時価三〇〇円相当、同号の二五)並びに現金五三三円、ファッションリング一個(時価一〇〇〇円相当、同号の一三)、ブローチ一個(時価一〇〇〇円相当、同号の一四)、ペンダント付ネックレス一個(時価一〇〇〇円相当、同号の一五)及びボタン一個(同号の一六)の在中する透明プラスチック製の入れ物一個(時価一〇〇〇円相当、同号の一二)をそれぞれ強取し、さらに被告人Fにおいて、自己のハイヒールで○○の頭部を殴打した上、所携の木刀で同人の腕付近を殴打し、また被告人Eにおいても、同様ハイヒールで○○の頭部を殴打した上、所携の木刀で同人の腕付近及び左側頭部を殴打し、次いで○○車両から△△所有のタオル掛け一個(時価三〇〇円相当、同号の二四)及び縫いぐるみ二個(時価合計一〇〇〇円相当、同号の二六及び二七)を、さらに○○から現金一五〇円をそれぞれ強取したところ、右丘陵地から戻った被告人Dにおいて同車両右側をたたいて右後部三角窓ガラスを損壊した上、○○の顔面を手拳で五、六回殴打し、さらに△△が上半身裸の状態で前記第一駐車場に連れ戻されるや、被告人E及びFにおいて△△を全裸にし、被告人Aにおいて「やきを入れたれ。」と他の被告人に申し向け、被告人E及び同Fにおいてこもごもたばこの火を△△の胸部、背部及び肩付近に押し付け、被告人Bもこれに加わりたばこの火を同女の胸部に一回押し付け、右足を押し広げて同女の陰部にシンナーを注ぎかけ、この間被告人Aにおいて前記暴行脅迫により反抗を抑圧されている○○からその所有する自動車運転免許証一通(同号の六)を強取したが、その際、前記一連の各暴行により、○○に対し加療二ないし三週間を要する頭部挫創及び左上肢打撲傷の、△△に対し加療約一週間を要する背部及び胸部第二度火傷の各傷害を負わせ、

第四  右犯行現場から○○及び△△を連行した上、同日午前七時三〇分ころ、愛知県海部郡弥富町字ロノ割一〇番地所在の食堂喫茶「オートステーション」店内において、被告人Aが、判示第三の犯行の発覚を免れるため、○○を殺害し、△△は他に売り飛ばせなかった場合同様に殺害し、右両名の死体を土中に埋没させ遺棄することを提案したところ、被告人Dがこれに積極的に賛同したのに続いて、被告人C、同E及び同Fもこれに賛同し、同八時ころ同店駐車場において被告人Aからその旨聞かされた同Bもこれに賛同し、ここに被告人六名は共謀の上、

一  同月二四日午前四時三〇分ころ、愛知県愛知郡長久手町大字長湫字卯塚二五番地所在卯塚公園墓地D一区画内西側において、被告人A及び同Bが○○の殺害を実行しようと、同人の頸部に青色ビニール製洗濯用ロープ(同号の八)を二重に巻き付けて首の前部で交差させ、被告人Aが○○の左側、同Bがその右側にそれぞれ右ロープの両端を所持して起立した上、○○が「やめて下さい。助けて下さい。」と哀願するのを無視して、被告人両名において右ロープを強く引き合って○○の頸部を二回にわたり合計約二〇分間締め続け、よってその場で同人を右絞頸に基づく窒息により死亡させて殺害し、

二  同月二五日午前三時ころ、三重県阿山郡大山田村大字上阿波字奥那須ケ原九九八番地所在山林内私道上において、被告人A及び同Bが△△の殺害を実行しようと、同女を下着一枚の姿にさせて座らせその頸部に青色ビニールひも(同号の九)を二重に巻き付けて首の前部で交差させ、被告人Aが△△の右側、同Bがその左側にそれぞれ右ビニールひもの両端を所持して起立した上、被告人両名において右ビニールひもを二度にわたって強く引き合い、右ビニールひもが外れるや同女の頸部に青色ビニール製洗濯用ロープを三重に巻き付けて首の後部で交差させ、右同様被告人A及び同Bにおいて右ロープを二度にわたって強く引き合い、合計約三〇分間にわたり同女の頸部を締め続け、よってその場で同女を右絞頸に基づく窒息によって死亡させて殺害し、

三  同日午前三時三〇分ころ、判示第四の二記載の場所において、あらかじめ死体を遺棄するため同所付近に掘っておいた約一・五メートル四方、深さ約〇・九メートルの穴に、被告人C、同A及び同Bにおいて○○の死体を、次いで同A及び同Bにおいて△△の死体を順次投げ込んだ上、同C、同A及び同Bにおいて、右穴を土砂で埋めて右両名の死体を遺棄し、

第五 被告人Fは、公安委員会の運転免許を受けないで、かつ、酒気を帯び、呼気一リットルにつき〇・二五ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で、同六二年八月一二日午前一時五分ころ、名古屋市中区新栄二丁目二三番七号付近道路において、原動機付自転車を運転したものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(事実認定の補足説明)〈省略〉

(法令の適用)

被告人六名の判示第一の所為は被害者ごとにそれぞれ刑法六〇条、二四三条、二三六条一項に、同判示第二の所為は被害者ごとにそれぞれ同法六〇条、二四〇条前段に、同判示第三の所為のうち、○○に対する所為の点は同法六〇条、二四〇条前段に、△△に対する所為の点は、被告人C、同D及び同Bにつき同法六〇条(ただし、被告人A、同E及び同Fに対する関係においては強盗致傷の範囲で)、二四一条前段に、同A、同E及び同Fにつき同法六〇条、二四〇条前段に、被告人六名の判示第四の一及び二の所為はいずれも同法六〇条、一九九条に、同判示第四の三の所為は死体ごとに同法六〇条、一九〇条に、被告人Fの判示第五の所為のうち、無免許運転の点は道路交通法一一八条一項一号、六四条に、酒気帯び運転の点は同法一一九条一項七号の二、六五条一項、同法施行令四四条の三にそれぞれ該当するところ、判示第一及び判示第五は一個の行為で二個の罪名にそれぞれ触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条によりそれぞれ一罪として判示第一については犯情の重い△△に対する罪の刑で、判示第五については重い無免許運転の罪の刑でそれぞれ処断することとし、被告人六名につき判示第二の○○及び△△に対する各罪並びに判示第三の○○及び△△に対する各罪についていずれも所定刑中有期懲役刑を、判示第四の一及び二の各罪については、所定刑中被告人A及び同Bにつきいずれも死刑を、同C、同D、同E及び同Fにつきいずれも有期懲役刑を、判示第五の罪については懲役刑をそれぞれ選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、被告人A及び同Bにつき同法四六条一項本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第四の二の罪の刑で処断し他の刑を科さないこととして被告人Aを死刑に処し、さらに被告人Bにつき少年法五一条を適用して同被告人を無期懲役に処し、被告人C、同D、同E及び同Fにつき刑法四七条本文、一〇条を適用し刑及び犯情の最も重い被告人C及び同Dの関係では判示第三の△△に対する、被告人E及び同Fの関係では判示第三の○○に対する各罪の刑にそれぞれ同法一四条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人Cを懲役一七年に、同Dを懲役一三年に処し、被告人E及び同Fにつき少年法五二条一項、二項により、右被告人両名をそれぞれ懲役五年以上一〇年以下に処し、刑法二一条を適用して被告人C、同D、同E及び同Fに対し未決勾留日数中各四〇〇日をそれぞれの刑に算入することとし、押収してある木刀片二本(昭和六三年押第一六三号の一及び三)、中古木刀一本(同号の五)、木刀一本(同号の三五)は判示○○に対する強盗致傷及び△△に対する強盗強姦ないし強盗致傷の用に、同特殊警棒一本(同号の三六)は判示○○に対する強盗致傷の用にそれぞれ供したもので被告人D以外の者に属さず、同中古青色ビニール製洗濯用ロープ一本(同号の八)及び同中古青色ビニールひも一本(同号の九)は判示△△に対する殺人の用に供したもので前者は被告人A及び同F、後者は被告人C及び同A以外の者に属しないから、同法一九条一項二号、二項本文を適用して右各被告人からこれらを主文のとおり没収することとし、押収してある自動車運転免許証一通(同号の六)、透明プラスチック製の入れ物一個(同号の一二)、ファッションリング一個(同号の一三)、ブローチ一個(同号の一四)、ペンダント付ネックレス一個(同号の一五)、ボタン一個(同号の一六)、ワイドミラー一個(同号の一七)、中古タオル掛け一個(同号の二四)、櫛一個(同号の二五)及び白色縫いぐるみ二個(同号の二六及び二七)は判示第三の罪の賍物で被害者に還付すべき理由が明らかであるから、刑事訴訟法三四七条一項により、右自動車運転免許証一通を被害者○○の相続人に、透明プラスチック製の入れ物一個、ファッションリング一個、ブローチ一個、ペンダント付ネックレス一個、ボタン一個、ワイドミラー一個、中古タオル掛け一個、櫛一個及び白色縫いぐるみ二個を被害者△△の相続人にそれぞれ還付することとし、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項ただし書を適用して被告人いずれにも負担させないこととする。

(量刑の理由)

一  本件は、判示のとおり、犯行時一七歳三名、一八歳一名、一九歳一名、二〇歳一名の計六名の被告人が共謀の上、深夜から早朝にかけて立て続けに金品強取を目的として、あらかじめ準備した木刀、鉄パイプ、特殊警棒を使用し、人気の少ない埠頭、公園の自動車内で逢瀬を楽しんでいた三組の男女六名に対し暴行脅迫を加えて、内四名から金品を強取し、最後に襲った一組の男女についてはその女性を被告らのうちの三名において強いて姦淫した上、犯行の発覚を免れるため、何ら落ち度のないこの両名を一ないし二日連れ回した上順次絞殺してその死体を人里離れた山中に遺棄した事案であり、被告人Fにおいては、これらに加えて無免許で酒気を帯び原動機付自転車を運転したという事案であるが、まず、その一般的情状について検討する。

二1(一) 犯行態様について見るに、判示第一の強盗未遂においては、木刀で自動車を損壊した上逃走する被害車両を約三〇分間追跡し、被害者が派出所に救助を求めて避難するや、後日金品を奪取するため被害車両のナンバーを控えるという執拗さが見られ、判示第二及び第三の強盗致傷、強盗強姦においては所携の木刀、鉄パイプおよび特殊警棒、あるいは手拳等で見境なく被害者らの身体及び自動車を殴打し、殊に判示第三の△△に対する強盗致傷等については同女を全裸にし、たばこの火を同女の身体に押し付け、あるいは同女の陰部にシンナーを注ぎかける行為に及ぶなど、その暴行の程度は○○及び△△に対して被告人ら自身やり過ぎたと自覚するほど強烈であった上、被害者四名の所持する金品をことごとく奪取しており、そして△△に対する姦淫行為も、被告人三名によって順次敢行されたいわゆる輪姦であり、しかも被告人Dの姦淫中に被告人Bにおいて同女に対し屈辱的なわいせつ行為に及んでいて悪質この上ない。

(二) 判示第一ないし第三の強盗行為は、金城埠頭における○○らに対する強盗行為が未遂に終わるや、再び同所に戻った上で○○らに対し強盗行為に及び、その上さらに大高緑地公園へ赴いて○○らに対し強盗行為に及んだもので短時間のうち三件、しかも前の二件は同じ場所において敢行している点も、大胆かつ悪質というべきである。

(三) 判示第四の一及び二の殺人においては、大高緑地公園における暴行により傷害を負った○○及び△△に何らの治療も施さずに、○○を丸一日、△△にいたっては丸二日連れ回し、その間右両名に対し、将来解放することをほのめかしながら、結局は両名をいずれも殺害しており、殊に△△に対しては、二月二四日午前中同女が金城埠頭岸壁から海中に飛び込もうと試みるほど同女を精神的に追い込み、死の恐怖に長時間さらした末にこれを絞殺したものである上、○○殺害の際には、同人が「殺さないでください。」と命ごいをするのに耳を貸さずに、無抵抗の同人を絞殺し、また△△殺害の際にも、既に観念し、無抵抗状態の同女に対し、被告人Aにおいて「綱引きだぜ。」と口にしながら実行行為に及び、同Cにおいては笑いすら浮かべて傍観し、さらにいずれの殺害においても、被告人A及び同Bにおいて、「このたばこを吸い終わるまで引っ張ろう。」と話し合いながら平然と首を絞め続けており、しかも、実行中再三にわたって被害者の生死を確認し、死亡が確認できるまで首を締め続けて殺害しており執拗かつ冷酷極まりない。

(四) 判示第四の三の死体遺棄についても自ら両名を死に至らしめながらその成仏を願うでもなく両名の死体をかけ声とともに穴に投棄したものである上、犯行のこん跡を消し去ることをもくろんで敢行された点も悪質という外はない。

2(一) 次に本件犯行の動機について見るに、強盗未遂及び強盗致傷の各犯行はいずれも、遊興費欲しさに加えて、他人に暴行脅迫を加えて快感を得ようとの欲求に基づくものであり、被告人六名の生活態度からすれば、遊興費欲しさなど動機として酌量の余地に乏しい上に、他人に危害を加えたいとの欲求も反社会的であって酌量の余地はない。そして強盗強姦について酌量の余地がないことは多言を要しない。

(二) 殺人及び死体遺棄については、右○○及び右△△に対する強盗致傷、強盗強姦の各犯行が発覚するのを免れるために敢行されたものであるが、いずれも自己の保身のためには他人の生命など全く省みないという被告人らの態度の発現であることがうかがわれ、極めて自己中心的であり、これまた酌量の余地はない。

3(一) さらに判示第一ないし第三の各犯行により生じた結果について見るに、強盗未遂については○○車両の後部窓ガラス、助手席窓ガラスが大破し、同車両の方々に損傷が認められ、○○及び△△に対する強盗致傷については、強取された金品の総額は一〇万三〇〇〇円にのぼり、両名にそれぞれ加療一週間を要する傷害を負わせたほか、○○車両の損傷も損害額八〇万円に及び、決して軽いとはいえない。また、○○及び△△に対する強盗致傷、強盗強姦についても強取された金品の総額は合計二万八〇〇〇円余であり、両名にそれぞれ加療約二ないし三週間あるいは一週間を要する傷害を負わせたほか、○○車両の損傷も、窓ガラス、前照灯、両サイドミラーがすべて損壊し、その他車体の方々にも損傷が認められ、これまた軽いとはいえない。

(二) 殺人については、何ら落ち度のない春秋に富む○○及び△△を絞殺し、かけがえのない生命を次々に奪ったものであって、その結果が極めて重大であることは、いうまでもないが、○○は、昭和四三年一〇月二一日名古屋市南区において出生し、同五九年三月に中学校を卒業した後、理髪店を営む実父の後を継ぐことを決意して理容高等学校に進学し、同六〇年三月同校を卒業後、同年四月以降は理容師見習いとして愛知県大府市内の理髪店に勤務し、同年一〇月国家試験に合格して理容師免許を取得した後、同六三年一月からは理容師として誠実に稼働していたものであり、雇主の評価も高く、殊に実父からは自己の後継者として深い愛情と信頼を寄せられていたものであり、また、△△は同四二年一〇月一六日長崎県佐世保市において出生し、愛知県大府市内の中学校を卒業後、会社員として稼働する傍ら同市内の高等学校定時制に進学し、同六二年二月同校を卒業後、理容師を志して○○の勤務する同市内の理容店に理容師見習いとして稼働し、同店において○○と知り合い、交際を続け、理容学校の通信教育を受けて国家試験受験準備をしていたものであり、周囲からの評判もよく、とりわけ両親、兄及び二人の姉の愛情の中で成育して来たのである。そして、両名とも前記のとおり理容師として将来大成する希望に燃えていた矢先、被告人らの凶行によって非業の死を余儀なくされたものであるが、両名とも被告人らによって解放されることに期待を持ちながら遂に果たせず、○○は△△を被告人らの下に残したまま殺害され、また△△は、先に○○が殺害されたことを悟り、丸一日恐怖にさらされながら殺害されたものであって、両名の生前における苦痛及び無念さは、察するに余りあるものといわねばならない。

4 本件犯行はいずれも計画的である。すなわち○○らに対する強盗未遂においては前記テレビ塔西側交差点において、謀議をした上凶器を分配するなどの準備行為を行っており、金城埠頭へ向かう途中ガムテープを購入してナンバーを隠しており、○○及び△△に対する強盗致傷においても、右○○らに対する犯行が未遂に終わった直後、再度謀議をし、犯行直前にガムテープを貼付し直すなどの行為に出ている。そして、○○及び△△に対する強盗致傷、強盗強姦においても、右テレビ塔西側にいったん戻ってさらに謀議した上、大高緑地公園第一駐車場に赴き○○車両を発見するや、付近のロータリーに戻りナンバープレートを隠し犯行に臨んでおり、右同様計画性が認められ、殺人、死体遺棄においても、右「オートステーション」で共謀の上、両名殺害に先立ち絞殺用の凶器として青色ビニール製洗濯用ロープや青色ビニールひもを購入し、あるいは死体遺棄のための穴掘り用にスコップを準備するなど、これまた計画的である。

5 本件は、深夜早朝にわたって見ず知らずの男女を次々と急襲したもので、言わば通り魔的犯行であり、何ら関係のない一般市民もいつ何時被害に遭うやも知れないという社会不安を生じさせたものであり、また欲求不満にかられるまま暴行を働き、金品を強取するといった本件のごとき犯行態様は、その模倣性が高く、本件各犯行の社会的影響は極めて大きい。

6 本件被害者六名は、深夜早朝車内で逢瀬を楽しんでいたところ、突然被告人六名に急襲されたもので、被害者らに何ら落ち度は認められない。

7 判示第二の強盗致傷の被害者○○は一時は殺されると観念したものであり、判示第一の強盗未遂の被害者○○及び△△並びに判示第二の強盗致傷の被害者△△も、○○と同じく多大な恐怖を覚えたことが認められ、同人らはいずれも被告人六名に対する厳罰を望んでいる。

8 ○○及び△△の両名にこれまで深い愛情を寄せていた両名の遺族らの無念さも甚大なものがあり、被害感情の深刻さもとりわけ深く、遺族らは示談を遂げながらもなお被告人六名に極刑を望んでいる。

三  以上のように、被告人六名に共通した不利な情状が認められるが、他方、本件各犯行は、それらにより被害者らに与える損害及びその重大性を必ずしも十分に認識し得ない精神的に未成熟な少年らが集団を形成し、相互に影響し合い刺激し合い同調し合って敢行したものである(もっとも、被告人Cは犯行当時成人であったが、同被告人は二〇歳に達したばかりの若年であり、本件において前記暴力団薗田組の先輩格である被告人Aに終始追従する形で行動しており、被告人C一人が成人であったからといって、本件犯行が前記のような基本的特徴を有する犯罪であることを妨げるものではない)と認められ、右事情は被告人六名の刑責を量定するについて有利にしんしゃくすべきものというべきである。

四  次に前記の一般的情状に加えて、以下、各被告人の個別的情状について検討する。

1  被告人Cは、本件犯行約一箇月前に二〇歳に達した成人であるが、窃盗の前歴を有している上に、犯行当時暴力団構成員として組長身辺の護衛に当たっていた事実が認められるなど反社会的性向もうかがわれるところであり、その刑責は重大である。しかし他方、殺人の共謀においては、被告人A及び同Dらの提案に対し積極的に発言することなく終始うなずく形で同調の意を表していたにとどまる上に、○○殺害の現場には赴いておらず、△△殺害の際には現場に居合わせたものの実行行為には直接関与していなかったもので、本件において主導的役割を担ったものとはいえず、さらに、過去新聞配達及び土工として誠実に稼働していた時期があることに加えて、△△の遺族らとの間で示談が成立し、また当公判廷において終始反省の態度を示しているといった有利な事情も認められる。

2  被告人Aは、本件犯行時一九歳六箇月の年長少年であったが、本件強盗の犯行を最初に提案した上、急襲する男女を指示し、殺人及び死体遺棄の共謀においても率先してその方法を提案し、なおかつ両罪の積極的実行行為者であって、被告人Fの道路交通法違反を除いては、本件各犯行を通して首謀者的地位にあったことに加えて、○○、△△殺害後も平然としてたばこの吸いがらを拾うなど罪証隠滅工作をしており、また、窃盗の前歴を有している上に、保護観察中に別罪を犯したり、家庭裁判所において不処分決定が出るや予定された就職先を嫌って直ちに所属していた暴力団事務所に戻るなど、犯罪性の根深さがうかがわれ、その上、少年鑑別所において、反省しているとは思えぬ態度が散見されたことをも併せ考えれば、その刑責は誠に重大である。しかし他方、犯行当時は暴力団薗田組を離脱して、とび職として稼働しており、無為徒食していたわけではないこと、被告人Aの両親と遺族らとの間で示談が成立していること、そして本件犯行後、被告人Aは被告人Fと二人で殺害した両名のことに思いを致し涙を流し、さらには拘置所移監後、実母との面会の際にも涙を流すといった反省の態度も芽生えており、当公判廷においても反省していると述べていることなど、有利な事情も認められる。

3  被告人Dは、本件犯行当時一八歳一〇箇月の年長少年であり、殺人及び死体遺棄の共謀においては被告人Aの被害者両名を殺害する旨の提案に対し積極的にこれを支持する発言をし、凶行に向けて集団意思を形成するのに重大な役割を果たしている上に、同被告人が所属していた暴力団の所用で殺人の共謀直後被告人Aと別れた後も被告人Aは再三被告人Dとの連絡を試みており、その精神的役割は重大であったというべきであり、また、大高緑地公園においては△△姦淫を提案していること、前記のように犯行当時暴力団組員であったこと、少年鑑別所において官本に落書をするなど反省しているとは思えぬ態度が散見されたこと、恐喝の前歴を有していることを併せ考えると、その刑責は重大であると言わざるを得ない。しかし他方、被告人Dは殺人及び死体遺棄の現場に居合わせていないこと、同被告人の母と遺族らとの間で示談が成立していること、最近に至っては母宛の手紙の中で反省の態度を示しており、当公判廷においても反省していると述べていることなど、有利な事情も認められる。

4  被告人Bは、本件犯行当時一七歳に達したばかりの少年であるが、被告人Aとともに、○○及び△△殺害の実行行為者であり、殺害後も被告人A同様平然とたばこの吸いがらを拾い集めるといった罪証隠滅工作をなしている上に、殺人共謀後あるいは○○殺害後も△△をもてあそぶ(なお、「ホテルロペ三九」における姦淫の事実は認められない)などしており、しかも、一四歳未満のころ窃取行為を犯した前歴を有していること、少年鑑別所において官本に落書をするなど反省しているとは思えぬ態度が散見されたことを併せ考えると、その刑責は誠に重大である。しかし他方、同被告人は被告人A同様犯行当時薗田組を離脱して、とび職として稼働しており、無為徒食していたわけではないこと、当公判廷において反省していると述べていることなど有利な事情も認められる。

5  被告人Eは、本件犯行時一七歳七箇月の少年であるが、△△及び△△に対し残忍な暴行行為に及んでいること、判示第二の強盗致傷の犯行後、自己の分け前が少ないことから大高緑地公園で再度強盗を行うことを提案していること、犯行当時暴力団組員と同居し、無為徒食していたことを併せ考慮すれば、その刑責は重大であると言わざるを得ない。しかし他方、殺人及び死体遺棄の共謀においては、単にうなづく形で同意の意思を表していたに過ぎず、その各犯行現場においては実行行為に直接携わることなく、A車両に残り傍観していたにとどまっていること、被告人E及びその両親と遺族らとの間で、示談が成立していること、同被告人は当公判廷において反省の態度を示していることなど、有利な事情も認められる。

6  被告人Fは、本件犯行時一七歳一箇月の少年であるが、右被告人E同様△△及び△△に対し残忍な暴行行為に及んでいること、昭和六二年に無免許運転等で検挙され、同年六月に無免許講習を受けていながら判示第五の犯罪に及んでいることをも考慮すれば、その刑責は重大であると言わざるを得ない。しかし他方、被告人E同様、殺人及び死体遺棄の共謀においては単にうなづく形で賛意を表したに過ぎず、その犯行現場においてはA車両に残りその実行行為には直接手を下してはいないこと、幼少のころより劣悪な成育環境において閉鎖的性格を形成していたことから、精神的に未熟さが残り、本件において被告人Aに終始追従しているのも右性格形成、ひいては被告人Fの成育環境に一因があったと認められること、本件犯行後、○○らのことを思い被告人Aと一緒に涙を流し、少年鑑別所入所後毎日右両名の冥福を祈っており、またその弁護人宛の手紙や当公判廷において反省の態度を示していることなど、有利な事情も認められる。

五  そこで以上の事情を総合すると、被告人A及び同Bの罪責は誠に重大であり、前認定の被告人に有利な事情を考慮に入れても、さらに可そ性に富む少年に対する極刑の適用は特に慎重であるべきことを考慮に入れても、被告人Aについては死刑に処する外はない。そして、同Bについては死刑を選択するも少年法五一条により無期懲役に処することとする。

六  その他の被告人四名については、前認定の事情の下、それぞれその責任が重大であることは論を待たないが、おのおのにつき認められる前記各事情を総合考慮すれば有期懲役刑に処するのを相当と認め、それぞれ主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小島裕史 裁判官 伊藤新一郎 裁判官 柴崎哲夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例